訪問診療における加算算定の重要性

訪問診療の診療報酬は、基本報酬だけでなく、各種の加算によって適正な収益を確保する仕組みになっています。しかし、加算の適用条件は細かく設定されており、ルールを誤ると加算の抜け漏れや誤請求が発生し、クリニックの収益に大きな影響を与えます。

• 加算要件を満たしていても、算定漏れが発生する
• ルールの変更に対応できず、適正な請求ができない
• 過剰請求や誤請求が発覚すると、返還請求や監査リスクが発生

適正な加算算定を行うことは、訪問診療の経営の安定化に直結します。本記事では、よくある加算の算定ミスとその対策について詳しく解説します。

訪問診療でよくある加算の算定ミス

訪問診療では、以下のような加算ミスが発生しやすい傾向にあります。

① 初診加算・再診加算の算定ミス

• 初診加算と再診加算を誤って請求する
• 訪問診療での初診・再診の定義を誤る

例：よくあるケース

• 初診時の加算を2回請求してしまい、監査で指摘を受けた
• 3カ月以上訪問診療が途絶えていたのに、再診加算で請求していた

解決策：

• 初診・再診の定義を正確に理解し、初診の適用ルールをマニュアル化
• RPAを活用し、初診・再診の自動チェックを行う

② 在宅療養支援診療所（機能強化型）の加算ミス

• 24時間対応体制が整っていないのに加算を請求
• 複数の医療機関で訪問診療を行っている場合の算定ルールを誤る

例：よくあるケース

• 機能強化型の要件を満たしていないのに、機能強化加算を請求した
• 他院と重複して訪問診療を行っている場合の加算ルールを誤解していた

解決策：

• 在宅療養支援診療所の加算要件を満たしているか定期的にチェック
• 他の訪問診療医療機関との連携状況を整理し、加算の適用ルールを確認

③ 医療管理加算・特定疾患療養管理料の算定ミス

• 特定疾患療養管理料の対象疾患を誤る
• 在宅患者の病状を適切に評価せずに加算を算定

例：よくあるケース

• 誤って対象疾患以外の患者に特定疾患療養管理料を請求した
• 加算の要件を満たしていないのに請求してしまい、監査で指摘を受けた

解決策：

• 特定疾患療養管理料の適用基準を明確にし、マニュアル化
• 診療記録に加算の根拠となる記載を徹底する

④ 居宅療養管理指導の加算ミス

• 訪問診療と訪問看護の重複請求
• 医療機関と介護事業所の役割を混同している

例：よくあるケース

• 訪問診療と訪問看護の両方で、居宅療養管理指導を請求してしまった
• 加算の適用条件を誤解し、正しい算定ができていなかった

解決策：

• 訪問診療と訪問看護の加算適用ルールを整理し、混同を防ぐ
• 電子カルテとレセプトデータを連携し、算定ミスを防ぐチェック体制を整備

訪問診療クリニックが加算の抜け漏れを防ぐ方法

訪問診療の加算算定ミスを防ぐためには、院内でのチェック体制を強化し、業務の自動化を進めることが重要です。以下に、具体的な対策を紹介します。

① 加算ルールをマニュアル化し、スタッフ全員で共有する

• 診療報酬改定のたびに加算ルールを更新
• 院内のマニュアルを常に最新の状態に保つ

具体的なアクションプラン

• 診療報酬改定の内容を反映した加算チェックリストを作成
• 医療事務スタッフ向けに、月1回の勉強会を実施

② RPAを活用して、加算算定を自動化する

• 加算の適用条件をRPAでチェックし、算定ミスを防ぐ
• 加算の算定漏れがないか、自動でリスト化する

RPA導入のメリット

• 算定ミスを削減し、監査対応の負担を軽減
• 請求漏れを防ぎ、収益の安定化を図る

RPAを活用すれば、加算の適用ミスを大幅に減らすことが可能！

③ レセプトチェック体制を強化し、二重チェックを徹底する

• レセプト請求前に、医療事務と医師が確認を行う
• 診療記録と加算請求が整合しているかをチェック

具体的なアクションプラン

• 月1回、レセプト業務の振り返り会を実施
• レセプト業務のダブルチェック体制を構築

まとめ：訪問診療の加算算定を適正に行い、収益を最大化する

訪問診療の加算算定は、細かいルールを正しく理解し、適切に請求することが重要です。

• 加算の適用ルールを整理し、マニュアル化する
• RPAを活用し、加算のチェックを自動化する
• レセプトチェック体制を強化し、二重チェックを徹底する
• 診療報酬改定のたびに、最新のルールにアップデートする

適正な加算算定を行うことで、訪問診療クリニックの経営の安定化と、監査リスクの低減が可能になります。

次回は「訪問看護と訪問診療の連携を強化するには？」について詳しく解説します！